ダイオウトカゲモドキ

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ダイオウトカゲモドキ

Eublepharis fuscus BÖRNER, 1981

 

今回モデルになってもらったのはダイオウトカゲモドキEUCB♀のドリアン。

アダルトで購入したので、残念ながら幼体の頃の写真はありません。

 

今回はダイオウトカゲモドキの形態的特徴などについて調べていきます。

飼育法の話は一般的なヒョウモンのそれと特に変わらないのでここでは書きません。

 

現在「ダイオウトカゲモドキ」として流通する種の特徴はこんな感じでしょうか。

・白~黄色の地に褐色斑(胴部では2本の帯状になる)

・頭部は大きい

・体形は同属の他種に比べて太短い

・皮膚は全体的に滑らか

・属内最大との噂(和名の由来)もあるが実際には中型程度

 

 

……ここで終わっては面白くないので、もう少し掘り下げて調べてみました。

この個体が本当にE.fuscusなのかも検証しています。

 

E.fuscusはインド西部に分布するトカゲモドキの一種です。

ダイオウトカゲモドキ、又は分布域からニシインドトカゲモドキ(Western Indian Leopard Gecko)とも呼ばれます。

ダイオウという呼び名は実態と乖離しているので、個人的にはニシインドの方がしっくりきますね。

 

初めはヒョウモントカゲモドキの亜種Eublepharis macularius fuscus BÖRNER 1974として記載されましたが、後に独立種Eublepharis fuscus BÖRNER, 1981とされて今に至ります。

 

タイプ産地はインドのムンバイから60km北の地点だそう。(Dahisarあたりでしょうか?)

 

またE.fuscusの形態的特徴は以下の通りです。(Das1997)

頑張って翻訳しましたが間違っていたら教えてください。

 

・上唇板は8枚で目の下まで

・頤板は小さく六角形

・〃は幅>前後長

・〃は後頤板2枚の倍の幅(?)

・腹面の鱗は42列

・前肛孔は10~11

 

・背面の疣状突起は尖らない

・〃の大きさは疣同士の間隔よりも小さい

・頭部の鱗は平滑

・趾下板は平滑

・後肢第4趾の長さ>第3趾

 

・頭部は褐色で白い斑紋がある(成体)

・胴は黄色と白で、褐色の斑点がある(成体)

・足は黄色から黄褐色で、褐色の斑点がある(成体)

 

形態的には、ここに当てはまるものだけがダイオウトカゲモドキという訳ですね。

 

遺伝的な話については、Agarwal2022では野生個体とペットトレードの遺伝子は一致していたようなので、同一の物として見て良いでしょう。

 

それを踏まえてうちの飼育個体を精査していきます。

 

>上唇板は8枚で目の下まで
〇 記載通りですね。色分けされていて分かりやすいです。

 

左からダイオウ、ヒョウモン(亜種不明)

 

>頤板は小さく六角形

〇 どちらかというと四角形ですが、潰れた六角形と言えばそうかもしれません。

 

>〃は幅>前後長

〇 明らかに幅の方が長いですね。ヒョウモンと比べると顕著です。

 

>〃は後頤板2枚の倍の幅(?)

△ 2倍(4枚)は言い過ぎですが3枚分くらいはありそうです。

  まあ個体差の範疇でしょうか?

 

>腹面の鱗は42列

〇 鱗の色、質感が変わる辺りから数えたらほぼ42でした。

  ヒョウモンが20~30程度なので明らかに多い(細かい)です。

 

>前肛孔は10~11

〇 12に見えます。個体差の範疇でしょう。

  ちなみに、記載はありませんでしたが尾の一節の尾下鱗は4枚ですね。

 

左からダイオウ、ヒョウモン(亜種不明)

 

>背面の疣状突起は尖らない

>〃の大きさは疣同士の間隔よりも小さい

〇 ヒョウモンもダイオウも、疣状鱗間の細鱗の枚数は2~4程度で同じくらいです。

  ダイオウの方が細鱗が大きいので間隔が空いているようです。

 

>頭部の鱗は平滑

〇 背面同様、疣状鱗が尖らず間隔が広いため平滑に見えます。

 

>趾下板は平滑

〇 ヒョウモンのように分割されていません。

  ちなみに後肢第4趾の趾下板は約20枚でした。

  記載論文では19~20とのことなので矛盾しませんね。

 

>後肢第4趾の長さ>第3趾

〇 他の種にも言えるので決め手にはなりませんが。

 

ついでにEyelid fringe scalesを数えてみました。

大体44くらいに見えます。

同属の他種はおよそ45~50くらいなので、ダイオウは若干少なめですね。

 

>頭部は褐色で白い斑紋がある(成体)

>胴は黄色と白で、褐色の斑点がある(成体)

>足は黄色から黄褐色で、褐色の斑点がある(成体)

〇 記載通りです。

  他の方の飼育個体を見ると、もっと褐色斑が細かい子も見られます。

 

 

検証はこんなところでしょうか。

結論としては、うちの"ダイオウトカゲモドキ"は正真正銘ダイオウトカゲモドキ=E.fuscusと言っても良さそうです。

 

同定する際はできるだけ原記載や最新の情報を当たるのは当たり前の事なんですが、実際にやると結構大変でした。

というか普通はショップで買った個体をいちいち同定しませんよね。

なんでいちいち調べるかという話は長くなるのでまた別の記事で……。

 

話が逸れましたが、ダイオウは良いトカゲモドキですよ!

特に他のトカゲモドキを飼っている人はぜひダイオウも飼ってみてください。

お互いの魅力を再確認できるでしょう。

 

次はヒガシインドあたりでも検証しようと思います。

それでは。