トカゲモドキ科>アジアトカゲモドキ属>ヒガシインドトカゲモドキ種
ヒガシインドトカゲモドキ
Eublepharis hardwickii GRAY, 1827
Eublepharis pictus Mirza & Gnaneswar, 2022
(ソメワケトカゲモドキなる和名が提唱されている模様。特徴をとらえていて良いと思います。)
モデルになってもらったのは「ヒガシインドトカゲモドキ」として購入したピール♀。
ヒガシインドトカゲモドキはEublepharisの中では最も個性的な種類のひとつです。
他種がおおよそ黄色地に褐色斑または帯という体色パターンなのに対し、本種は褐色部分の面積が広く、淡いオレンジの帯が入ります。
また、虹彩が黒く所謂エクリプスアイのような眼をしているため、可愛らしい顔つきに見えます。
体格は属内では小柄な部類に入ります。
(sp.Himalaya=アフガンAだとすればそちらの方が小柄。)
上の4枚はピール♀。下2枚は以前飼育していたシナモン♀。どちらも産地不明のEUCB。
個体の状態によって体色はかなり変化します。
活動時は明るく、休んでいたり調子が悪い時は濃くなる傾向があります。
床材の色や周囲の明るさも影響すると思われます。
上記のように特徴的なため、同定する際に迷うことはほとんどなかったのですが、最近の分類整理でそうとも言えなくなってきました。
従来E. hardwickiiとされていた種が分割され、一部が新種E.pictusとして記載されたのです。
一応、2種は形態で判別可能という事になっています。
以下、判別用に2種の特徴をまとめておきます。
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Gray(1827)によるE. hardwickiiの特徴
・Type locality(タイプ産地):バングラデシュ チッタゴン※
※チッタゴンがタイプ産地とされていますが実際には生息しておらず、
シノニムであるGymnodactylus lunatusの標本が、西ベンガル州ミドナープル、ジャールカンド州チャイバサで採集されていることから、実際の生息域もその周辺と思われます。
・頭胴長(SVL)140mmでEublepharis属内では中型
・背面全体に24列の平らな疣状鱗が並び、小さな鱗が混在
・頸の輪(←白帯?)と尾のくびれの間に1本の淡い帯
・趾下板(subdigital lamellae)は平滑
・後肢第4趾の趾下板は17
・前肛孔は16
ホロタイプの外見的特徴 Zeeshan(2022)より
・上唇板は左が11枚、右が9枚
・吻端板は中央で分割される
・〃は幅>長さ
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Zeeshan(2022)によるE.pictusの特徴
・タイプ産地はインド アーンドラ・プラデーシュ州ビシャーカパトナムの寺院近く
※ブラフマニ川より北側がE. hardwickii、南側がE.pictusになるそうです。
・頭胴長(SVL)117mm(最大)
・背面全体に23~26列の平らな疣状鱗が並び、小さな鱗が混在
・疣状鱗の大きさ>間隔
・頸と尾のくびれの間に1本の淡い帯
・趾下板(subdigital lamellae)は平滑
・後肢第4趾の趾下板は19
・前肛孔は17~18
またホロタイプの写真を見ると、上唇板は9枚程度に見えます。
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つまり、以下の条件を満たした個体ならE. hardwickii or E.pictusと断言できそうです。
ブラフマニ川北側産・後肢第4趾の趾下板17以下・前肛孔16以下→E. hardwickii
ブラフマニ川南側産・後肢第4趾の趾下板19以上・前肛孔17以上→E.pictus
わざわざ産地を書いたのは、形態だけで判別するのは個体差もあるため、確実とは言えないと思うからです。
うちの飼育個体の各部を確認してみました。
2種に共通する特徴は紫字、E. hardwickiiは赤字、 E.pictusは青字で示しています。
>背面全体に23~26列(h:24)の平らな疣状鱗が並び、小さな鱗が混在
>疣状鱗の大きさ>間隔
〇模様の似ているダイオウとはここで区別できます。
>頸と尾のくびれの間に1本の淡い帯
〇ヒョウモンやサトプラ、オバケとは帯の数が異なるため区別できます。
もちろんそれ以外も全然違うのですが。
上唇板は9枚くらいに見えます。
これはE. hardwickii・E.pictusを区別する決め手にはなりません。
>趾下板(subdigital lamellae)は平滑
>後肢第4趾の趾下板は17(h)vs後肢第4趾の趾下板は19(p)
うちの飼育個体の趾下板を数えてみたところ、19枚あるように見えました。
ここだけ見るとE.pictusの特徴です。
>前肛孔は16(h)vs前肛孔は17~18(p)
上と同一個体ですが、前肛孔は15に見えます。
これはE. hardwickiiの特徴と言えそうですね。
このように、形態で同定しようとするとどちらにも当てはまらない個体が出てきます。前肛孔の枚数、体色、体長、どれも個体差がありますから。
当然こういう個体もいると思いました。
あるいは形態だけを根拠にすれば、乱暴に交雑個体と言ってしまうこともできます。
私は流通やブリードの事情には疎いの分かりませんが、累代の進んだ個体については交雑もあり得る話なんじゃないかと思っています。
流通名のヒガシインドは、E.pictus記載前のものなのであてになりません。
この個体の産地は分からないので、これ以上は遺伝子を調べないと分かりません。
結論としては「E. hardwickii かE.pictusのどちらか」というほか無いでしょう。
今後、産地情報付きの個体や「pictus」の名で販売される個体が出てきたら、その時は再び検証してみたいと思います。
それまでは無難にヒガシインドと呼びます。
正直どっちでも一緒だろと思いますけどね!!(笑)
同じような物同士のわずかな違いを見つけて喜ぶのがオタクの性。