トルクメニスタントカゲモドキについて

 

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トルクメニスタントカゲモドキ

Eublepharis turcmenicus Darevsky, 1977

※注意※

分かりやすいように、うちの「トルクメニクス」の写真を交えながら書いていきますが、この個体が真のトルクメニスタントカゲモドキかどうかは何とも言えないので注意!!

この子は一応、「トルクメニクス」(トルクメニスタントカゲモドキ)として購入した個体です。この個体については、分類的な話は別として、こういう個性を持った子として承知の上で購入して可愛がっています。

まだ若い♂で、愛称はきんつばくんです。

 

それはそれとして「トルクメニスタントカゲモドキ」の分類上の話も気になりますよね。

 

2023年現在、Eublepharis属のトカゲモドキのほぼ全種がペットとして流通しており、専門店やイベント等で簡単に手に入れることができます。

このうち、オバケ、ダイオウ、ヒガシインドに関しては他種と間違えることはほぼ無いでしょう。

サトプラは私自身がまだ飼育経験がないため今回は言及しません。すいません。

しかし原種系レオパ各亜種やトルクメニスタントカゲモドキについては購入者が判別することは難しく、「販売者がそう言ってるからそうなんだろう」という程度の認識で購入するしかないのが現状ですよね。

模様とか体形が特徴とされがちですが、これって個体差が大きい上に、ライン・CB・WCでも結構変わるので何とも言えないんですよね。

(2023の東レプにて「ダイオウトカゲモドキ チョガザンビール」なる札を付けられたオバケを見かけましたが😓ここまで来ると買う方も買う方ですね)

 

ペットトレードにおいては計数形質やDNAよりも産地や模様が重視されており、「トルクメニクス」とか「モンタヌス」とかは、E.turcmenicusやE.m.montanusとは必ずしも一致しない可能性があると思います。

 

という訳で謎が多いトルクメニスタントカゲモドキですが、論文などから分かる範囲で調べてみました。

※私は単なる趣味飼育者です。英語も翻訳を使って読んでいます。

書いている内容が間違っていても責任は負いかねます。

詳しいことはご自分で調べてみてください!

 

では本題、トルクメニスタントカゲモドキとは何なのか?

まずは一般飼育者でも確認可能な外部形態について。

Darevsky1977(記載論文)による本種の特徴は以下の通りです。(外見から明確に判別可能なものを抜粋)

 

計数形質など

・趾下板(Subdigital lamellae)には弱い結節がある

・末端の趾下板3~4枚は分割されない

・頤板(下あごの先端の鱗)は前後長<幅(ヒョウモンは前後長>幅)

・第一下唇板は後頤板と接触しない(ヒョウモンは接触する)

・前肛孔は5~9個、1~4枚の鱗によって分断される

・睫板は54~55

・背面の疣状鱗は尖り、疣状鱗同士の間隔は広い、細鱗はかなり細かい(?)

・腹鱗は六角形で列数22~23

・吻端板の幅は前後長の1.5倍(ヒョウモンより若干狭い)

 

模様やサイズについて

・背面はピンクがかった白色

・頭部には不規則な暗色斑

・背面の暗色斑は横帯を形成する

・四肢には暗色斑が点在する

・腹部は白色

・頭胴長130+尾長80=全長210(←雌雄によって変わりそうですね)

 

さらにSEUFER et al.2005(原文ではなくクリーパー77より引用)では以下の通り。

・上唇板9~11

・下唇板9~11

・尾の一節には4列の鱗が並ぶ

後肢第4趾の趾下板は20~23

 

一般人が確認することは難しい遺伝子についても論文が出ています。

Agarwal2022の分子系統解析によると、トルクメニクスのトポタイプとされる個体はヒョウモンの亜種たちと単系統群を作っています。

ただし、これについては真のトルクメニクスではない個体の遺伝情報が間違ってサンプリングされた可能性を指摘しています。

またペットトレードにてトルクメニクスとして流通した個体も複数サンプリングされていますが、これもヒョウモンに内包されています。(これについては親個体時点での誤同定、交雑という可能性もありますね。)

本物のトルクメニクスについては確かめる術がないようなので、現状は遺伝的なことはわからないということでしょう。

 

つまりまとめると、

現在ペットとして流通するトルクメニクスは、真のトルクメニクスかもしれないし、ヒョウモンそのものかもしれないし、ヒョウモンとの交雑個体かもしれない。

形質が完全一致しない限りEublepharisのどれかとしか言えない。

 

模式産地でトルクメニスタントカゲモドキの要件を満たす個体を採集し、遺伝子を調べれば立ち位置が分かるかもしれませんね。

 

それを踏まえてうちの「トルクメニクス」を見てみましょう。

青字は記載論文等、黒字はうちの飼育個体です。

>前肛孔は5~9個、1~4枚の鱗によって分断される

△前肛孔は8。数はトルクメニクスの範疇ですが、分断はされていません。

もっとも同属の他種では個体によって分断されていたり、されていなかったりということもあるようです。

>腹鱗は六角形で列数22~23

〇どちらも見る人次第なところがあるので微妙なところです。

>腹部は白色

〇ほかの種類も大体そう。

>尾の一節には4列の鱗が並ぶ

△3列ですね。

ただし3列とされるヒョウモンでは実際には4列の個体もいるため個体差がありそう。

 

>趾下板(Subdigital lamellae)には弱い結節がある

〇ありますね。ヒョウモンは縦に4列くらいに分かれているので、それよりは粗い(弱い?)感じがします。

>末端の趾下板3~4枚は分割されない

〇4か5枚に見えるのでこれも概ね論文通り。

>後肢第4趾の趾下板は20~23

×どこまでを趾下板とするかが微妙ですが、17くらいに見えます。

この個体はヒョウモンの範疇になってしまいます。

 

上トルクメニクス、下ヒョウモン(亜種不明CB)


>第一下唇板は後頤板と接触しない(ヒョウモンは接触する)

×トルクメニクスはがっつり接触していますね。

一方同じく飼育個体のヒョウモンは接触していません。

どういうことでしょう??各種資料と実際の特徴が逆転しています。

他の飼育個体やネット上のヒョウモン・トルクメニクスの画像を確認してみましたが、やはり同様でした。

>頤板(下あごの先端の鱗)は前後長<幅(ヒョウモンは前後長>幅)

〇これはその通りですね。

 

>吻端板の幅は前後長の1.5倍(ヒョウモンより若干狭い)

〇これも記載通り。

 

>睫板は54~55

△写真が不明瞭ですが大体44前後くらいに見えます。

ヒョウモンの範疇にはなります。

ただ、ヒョウモンの場合は46~57とバラツキがあるのに対して、幅が狭すぎるのが気になります。サンプルが少なすぎるのではないでしょうか。

 

>背面の疣状鱗は尖り、疣状鱗同士の間隔は広い

〇微妙ですがヒョウモンよりは間隔が広いような気はします。

>背面の暗色斑は横帯を形成する

〇ただしいわゆる原種系ヒョウモンにも似たような模様の個体がいます。

>四肢には暗色斑が点在する

〇ただしヒョウモンも(略)。

>背面はピンクがかった白色

〇まあ見る場所によっては。

 

>頭部には不規則な暗色斑

〇まあこれは同属のほとんどの種が当てはまりますね。

 

結論

トルクメニスタントカゲモドキ(トルクメニクス)っぽい特徴は備えているが、交雑の可能性あり。

トルクメニスタントカゲモドキとヒョウモンが別種だとした前提

 

第一下唇板だけが引っ掛かりますね。大元のサンプルが逆になってるとかそういうことはないんでしょうか?

 

 

……なんともすっきりしない結果ですが、趣味の飼育なのでトルクメニクスっぽいトカゲモドキということで十分なのではないでしょうか!?

大元の分類が怪しいので確認したところであまり意味ありませんしね。(この記事の意味!?)

皆さんも、ピュアでも雑種でもモルフでも責任をもって可愛がってあげましょう!♥