トカゲモドキの比較 Eublepharis編

前にも紹介した通り、うちでは各種トカゲモドキを飼育しています。

モルフはさほど興味がないため個体数は少ないですが、種類数に関してはEublepharisはほぼ全種、その他も少々…といった感じで、そこそこバラエティに富んでいるかと思います。

 

今回はそれらのトカゲモドキを簡単に比較しながら、各々の違いや魅力を伝えられたらと思います。

以前の記事より成長して特徴が出てきた個体も多いので、そのあたりも注目です。

 

※飼育法に関しては私のスタイルを書いているだけです。

もし参考にされて問題が起きても責任は取れません。

 

※各種トカゲモドキは販売時のインボイスを信じて記載しています。

出来るだけ純粋で典型的だと思う個体を選んではいますが、混ざり等の可能性は否定できません。あくまで趣味で飼育する上での区別です。

 

↓↓↓

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カロリナキスイガメ

去年の年末に飼いたいリストにあげていたキスイガメです。
実は大晦日に滑り込みで購入していました。

 

カロリナキスイガメ(カロリナダイヤモンドバックテラピン)のコンセントリックと呼ばれるタイプです。

 

コンセントリックの条件なのか、特徴なのかよくわかりませんが、

 

・背甲の模様が同心円状になる

・腹甲の模様が筋状に繋がる

・顔の模様が筋状に繋がる

 

というような個体がこう呼ばれるようです。

 

 

これは購入したばかりの頃の写真。

まだ小さいですね。

背甲はちょっと白化してますが、まだベビーなので脱皮すれば綺麗になるかと。

 

この頃はまだ頼りない感じですね。

その後の成長はこちら。↓

 

バクバク食べるので成長速度がすさまじいです。

1か月ちょっとでこれです。

 

そして2024/2/12。

結構しっかりしてきました!

甲羅もうちに来てから成長した部分は非常に綺麗です。

 

やはり美しいカメですね。

甲羅も綺麗ですが、純白の肌に黒い模様というのも、他にはない特徴。

脱皮したらますます綺麗になるでしょう。

今後が楽しみですね。

 

これは去年飼育していたキタキスイガメ(チェサピーク)。

1か月ほどで皮膚病で死なせてしまいました。

この個体には申し訳ないのですが、これがあったから今回はうまくいったのかなぁと思っています。

飼育生体一覧 2023年12月末

早いもので2023年も終わりですね。

今年はとにかくお迎えラッシュで、自分でも引くほどお金を使いましたね~(瀕死)。

私はお金持ちではない普通の貧乏会社員ですが、命を削って買いまくっていたらこんなにたくさんの仲間ができました。

来年はこうはいくまい。

 

借金してまで買ったり、維持できないような種を買うのは馬鹿だと思います。

ただ、人はいつ死ぬか分かりませんから、飼いたい生き物は飼えるうちに飼うべきだと思います。

急に手に入らなくなることもあるのですから(ヒガシアフリカトカゲモドキを見ながら)。

 

私の話はともかく、さっそく紹介していきましょう。

長い記事になるので「続きを読む」をクリック(タップ!?)してください。

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ヒョウモントカゲモドキ

トカゲモドキ科>アジアトカゲモドキ属 >ヒョウモントカゲモドキ

ヒョウモントカゲモドキ

Eublepharis macularius (BLYTH, 1854)

 

今回は満を持してヒョウモントカゲモドキの紹介です。

本種については散々色々な方が紹介しているかと思いますが、この記事は種としてのヒョウモントカゲモドキについて、生体と論文とを比較しながら調べていきます。

飼育方法や各種モルフの紹介はありません!

 

今回サンプルになってもらったのは、パキスタンパンジャブ産WF2のつぶちゃん♀。

購入時の話では「パンジャブ産」とのことでした。

パンジャブと言えばタイプ産地のソルトレンジがありますね。

つまりトポタイプとまでは言いませんが、それに近い個体ということになります。

 

インボイスを信じるならば、別産地の個体や各種モルフ、近縁種の血が混ざっておらず、純粋なE.m.maculariusの特徴を残した個体であると言えます。

 

※ただし「パンジャブ」という流通名は、産地というよりは基亜種E.m.maculariusそのものに対する呼び名のような意味合いが強く、実際のところ「パンジャブ」が本当にパンジャブ産かどうかは怪しいところです。

 


 

本種はパキスタンを中心にインド、アフガニスタンの一部に生息しているようです。

>ネパールのヒョウモントカゲモドキ

最近ネパールでも報告がありましたが、それはどうも雰囲気が違うような気がしました。(個人の感想です)

未記載種のsp. Rajasthanやsp. Himalayaにあたる可能性もありますね。

 

また、本種には複数の亜種が存在します。

広域に分布する種ですから、地域ごとの違いは当然あるでしょうね。

 

……ただし、各亜種として流通する繁殖個体については正直よくわかりません。

「モンタヌス」、「ファスキオラータ」等、亜種名を冠しているものの、親個体の産地情報まで明示されているものがほぼいません。

さらに、それぞれの亜種名つき個体に共通した特徴のようなものはありますが、それが亜種の特徴なのか、単に親個体の個性を受け継いだものなのかは判別できません。

 

それらの個体は基本的に色柄で区別されることが多いですが、同じ産地どころか兄弟であってもかなり個体差がありますから、決め手としてはちょっと弱いと思っています。

 

そもそも、論文に記載された各亜種の形態差は個体差程度のものであったりするので、産地同定が極めて重要になってきます。

ゆえに産地が不明な個体は同定も不能となってしまうのです。

 

また、「アフガニクス」として流通する個体には、他の「原種系レオパ」とは異なる特徴がみられますが、これも本来のE.m.afghanicusとは別物である可能性があります。

アフガニクスについての記事

 

そういうわけで、各種亜種の事は一旦置いておいて、E.maculariusあるいは基亜種E.m.maculariusについて調べていきましょう。

 


 

本種が最初に記載されたのは1854年、ホソユビヤモリの一種Cyrtodactylus maculariusとしての記載でした。

タイプ産地は前述のとおり、パキスタンパンジャーブ州ソルトレンジ(Salt Range, Punjab)。

 

以下はE.maculariusについて記した論文からの抜粋です。

私の解釈が間違っている可能性もあるため、詳しいことは各自原文を確認してください。

 

Blyth, 1854

・趾下板には結節がある

・背面中央の疣状鱗の直径は間隔よりも大きい

・第1下唇板は後頤板と接する

・背面の斑紋は直線的に並ばない(=散らばる)

 

Grismer, 1988、 1991

・耳孔の高さは鼻孔の11/2倍(=5.5倍ってコト?)

・吻端板の幅は長さの2倍

・頤板は幅>長さ

・尾の腹側には3列の鱗が横に並ぶ

・睫板は46-57

・背面の疣状鱗は尖る

・〃の直径は間隔より小さい

・疣状鱗の間の細鱗は大きい

・腹鱗は丸みがあり、21-30列並ぶ

 

Minton, 1966

・成体の背面は麦藁色から淡い灰紫色、しばしピンク色

・〃には青黒い斑点がまばらに散らばるか、網目状に融合する場合もある

・通常、幼体時の横帯の痕跡が残る

 

Muhammad,2009

・前肛孔は8-17、孔のない鱗で分断される場合もある

・頭胴長120-160、尾長89-90

 

色々書かれていますが、他の種類と被る部分もありますね。

↓実際の個体と比較して見ていきましょう。

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サトプラトカゲモドキ

トカゲモドキ科>アジアトカゲモドキ属>サトプラトカゲモドキ種

サトプラトカゲモドキ

Eublepharis satpuraensis Mirza, Sanap, Raju, Gawai, & Ghadekar, 2014

 

ヒガシインド、ダイオウに続くインドのトカゲモドキです。

(ヒョウモンも一応インドにもいますが)

東西インドの境界に位置するサトプラ山脈に生息しています。

タイプ産地はマディヤ・プラデーシュ州のサトプラ国立公園。

(Pachmarhi town, Satpura Tiger Reserve, Madhya Pradesh state, India)

 

サンプルになってもらったのはプラム♀。(安易なニックネーム)

まだ若い個体なので、これからサイズも模様も変わってくるかと思います。

 

WF1個体ということで、WCには及びませんがサンプルとしては悪くないかと思います。あまりCB化が進むと特徴が薄れたり混血の可能性が出てきますからね。

 

一般に言われるサトプラの特徴をざっと挙げてみます。

私の個人的な見解も含んでいるので注意。

 

見た目の通り系統的にはヒョウモンに近いと言われます。

トルクメニスタンがはっきりしませんが、おそらく分岐順としてはサトプラの方が先なんじゃないかと思います。

 

体形はオバケのイーラームほどではありませんがすらっとしていて、特に尾が長い印象です。頭部は扁平気味です。

他の方の個体を見ていると、MAXサイズは平均的にヒョウモン以上オバケ以下くらいでしょうか。

 

E.satpuraensisの記載論文より

・頭胴長130mm程度

・背面に3本の帯

・背面の疣状鱗は20列、尖らない

・睫板は46~48

・上唇板は9枚で目の下まで

・吻端版は幅>長さ

・頤版は幅>長さ

・前肛孔は14、大腿孔はなし

・趾下板は平滑

・〃数は 左後肢で10–15–18–18–16(タイプ標本) 

・尾は円筒形で頭胴長より長い

 

翻訳が間違っていたらすみません。

細かいことは各自記載論文を見てください。

 

それでは最初に登場したプラム♀の各部を確認していきましょう。

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ヒガシインドトカゲモドキ(E. hardwickiiとE.pictus)

トカゲモドキ科>アジアトカゲモドキ属>ヒガシインドトカゲモドキ

ヒガシインドトカゲモドキ 

Eublepharis hardwickii GRAY, 1827

 

Painted Leopard Gecko

Eublepharis pictus Mirza & Gnaneswar, 2022

(ソメワケトカゲモドキなる和名が提唱されている模様。特徴をとらえていて良いと思います。)

 

 

モデルになってもらったのは「ヒガシインドトカゲモドキ」として購入したピール♀。

 

ヒガシインドトカゲモドキはEublepharisの中では最も個性的な種類のひとつです。

他種がおおよそ黄色地に褐色斑または帯という体色パターンなのに対し、本種は褐色部分の面積が広く、淡いオレンジの帯が入ります。

また、虹彩が黒く所謂エクリプスアイのような眼をしているため、可愛らしい顔つきに見えます。

 

体格は属内では小柄な部類に入ります。

(sp.Himalaya=アフガンAだとすればそちらの方が小柄。)

 

上の4枚はピール♀。下2枚は以前飼育していたシナモン♀。どちらも産地不明のEUCB。

個体の状態によって体色はかなり変化します。

活動時は明るく、休んでいたり調子が悪い時は濃くなる傾向があります。

床材の色や周囲の明るさも影響すると思われます。

 

 

上記のように特徴的なため、同定する際に迷うことはほとんどなかったのですが、最近の分類整理でそうとも言えなくなってきました。

従来E. hardwickiiとされていた種が分割され、一部が新種E.pictusとして記載されたのです。

 

一応、2種は形態で判別可能という事になっています。

以下、判別用に2種の特徴をまとめておきます。

 

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Gray(1827)によるE. hardwickiiの特徴

・Type locality(タイプ産地):バングラデシュ チッタゴン

チッタゴンがタイプ産地とされていますが実際には生息しておらず、

シノニムであるGymnodactylus lunatusの標本が、西ベンガル州ミドナープル、ジャールカンド州チャイバサで採集されていることから、実際の生息域もその周辺と思われます。

 

・頭胴長(SVL)140mmでEublepharis属内では中型

・背面全体に24列の平らな疣状鱗が並び、小さな鱗が混在

・頸の輪(←白帯?)と尾のくびれの間に1本の淡い帯

・趾下板(subdigital lamellae)は平滑

 

・後肢第4趾の趾下板は17

・前肛孔は16

 

ホロタイプの外見的特徴 Zeeshan(2022)より

・上唇板は左が11枚、右が9枚

・吻端板は中央で分割される

・〃は幅>長さ

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Zeeshan(2022)によるE.pictusの特徴

・タイプ産地はインド アーンドラ・プラデーシュ州ビシャーカパトナムの寺院近く

※ブラフマニ川より北側がE. hardwickii、南側がE.pictusになるそうです。

 

・頭胴長(SVL)117mm(最大)

・背面全体に23~26列の平らな疣状鱗が並び、小さな鱗が混在

・疣状鱗の大きさ>間隔

・頸と尾のくびれの間に1本の淡い帯

・趾下板(subdigital lamellae)は平滑

 

・後肢第4趾の趾下板は19

・前肛孔は17~18

 

またホロタイプの写真を見ると、上唇板は9枚程度に見えます。

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つまり、以下の条件を満たした個体ならE. hardwickii or E.pictusと断言できそうです。

ブラフマニ川北側産・後肢第4趾の趾下板17以下・前肛孔16以下→E. hardwickii

ブラフマニ川南側産・後肢第4趾の趾下板19以上・前肛孔17以上→E.pictus

 

わざわざ産地を書いたのは、形態だけで判別するのは個体差もあるため、確実とは言えないと思うからです。

 

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ダイオウトカゲモドキ

トカゲモドキ科>アジアトカゲモドキ>ダイオウトカゲモドキ

ダイオウトカゲモドキ

Eublepharis fuscus BÖRNER, 1981

 

今回モデルになってもらったのはダイオウトカゲモドキEUCB♀のドリアン。

アダルトで購入したので、残念ながら幼体の頃の写真はありません。

 

今回はダイオウトカゲモドキの形態的特徴などについて調べていきます。

飼育法の話は一般的なヒョウモンのそれと特に変わらないのでここでは書きません。

 

現在「ダイオウトカゲモドキ」として流通する種の特徴はこんな感じでしょうか。

・白~黄色の地に褐色斑(胴部では2本の帯状になる)

・頭部は大きい

・体形は同属の他種に比べて太短い

・皮膚は全体的に滑らか

・属内最大との噂(和名の由来)もあるが実際には中型程度

 

 

……ここで終わっては面白くないので、もう少し掘り下げて調べてみました。

この個体が本当にE.fuscusなのかも検証しています。

 

E.fuscusはインド西部に分布するトカゲモドキの一種です。

ダイオウトカゲモドキ、又は分布域からニシインドトカゲモドキ(Western Indian Leopard Gecko)とも呼ばれます。

ダイオウという呼び名は実態と乖離しているので、個人的にはニシインドの方がしっくりきますね。

 

初めはヒョウモントカゲモドキの亜種Eublepharis macularius fuscus BÖRNER 1974として記載されましたが、後に独立種Eublepharis fuscus BÖRNER, 1981とされて今に至ります。

 

タイプ産地はインドのムンバイから60km北の地点だそう。(Dahisarあたりでしょうか?)

 

またE.fuscusの形態的特徴は以下の通りです。(Das1997)

頑張って翻訳しましたが間違っていたら教えてください。

 

・上唇板は8枚で目の下まで

・頤板は小さく六角形

・〃は幅>前後長

・〃は後頤板2枚の倍の幅(?)

・腹面の鱗は42列

・前肛孔は10~11

 

・背面の疣状突起は尖らない

・〃の大きさは疣同士の間隔よりも小さい

・頭部の鱗は平滑

・趾下板は平滑

・後肢第4趾の長さ>第3趾

 

・頭部は褐色で白い斑紋がある(成体)

・胴は黄色と白で、褐色の斑点がある(成体)

・足は黄色から黄褐色で、褐色の斑点がある(成体)

 

形態的には、ここに当てはまるものだけがダイオウトカゲモドキという訳ですね。

 

遺伝的な話については、Agarwal2022では野生個体とペットトレードの遺伝子は一致していたようなので、同一の物として見て良いでしょう。

 

それを踏まえてうちの飼育個体を精査していきます。

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